The interview about the contents of lesson.//
Dept. of Interior Design
アートカレッジ神戸インテリアデザイン学科で行われている授業について担当の先生にお聞きしています
今回は『エンバイロメントデザイン』について田村先生にお聞きしました。
エンバイロメントデザイン Environment Design ( Second Year ) 10, May, 2006

QU. エンバイロメントデザインとは端的にどのような意味ですか?
ANS. 最近はインテリアに限らず建築や身につけられるものから都市的なスケールのものまで含まれてきます。広い意味では人間と環境との関わり方のデザインであり、その中で特にこの授業では建築的なデザインやインテリアデザインに関わる部分を扱っていきます。ことばの定義というものがあると思うのですが特にぼくが注意したいのは「自然と共生するデザイン」というのがキーワードになってくると思います。この部分を授業の中でわかりやすく学んでもらえたらなと思っています。
QU. エンバイロメントデザインではどのようなことが学習できますか?
ANS. 最初にしなければならないのは自然のサイクルから学ぶということなんですね。
簡単に云えばまず「自然を知る」ということです。その中にエネルギーの問題や光の問題、風の問題、それから風土的な部分であったりですね、例えば月の動きと潮の満ち引きがどう関係あるかとか、そういうことも範疇にはいってくるかと思います。そのうえでいろいろな多くのデザイン要素を使って場所を生かしきる工夫というのを設計につなげていくということが重要だと思います。他にも最新の設備であるとか素材であるとか学ばなければならない部分というのはあると思いますので、自然のサイクルから始まって最新の設備・素材などまでカバーしていけたらと考えています。
QU. この分野で特に注視する素材とはどのようなものでしょうか?
ANS. 一概には云えないとは思います。というのも建築に使える素材とインテリアに使える素材、あるいはプロダクトに使えるもの、それぞれ機能的に分かれてくると思うのですね、今までには考えられなかった素材というのも生まれてきつつありますし、例えば光を通すコンクリートのような注目すべき材料というのもあります。一方でベーシックな部分で知っておかなければならない昔からある素材についても、その特性を知ることによって新しい使い方というのも考えていかなければいけないのではないかなと思います。この授業の中では新しい素材を学ぶと同時に今までの素材を新しい視点から見直すというスタンスですすめていきたいと考えています。
QU. 「新しいものと古いものとのそれぞれのいいところとの共存というか、」
ANS. エンバイロメントデザインにかかわるような分野が注目される前の話ですが、わりと機械とか新しい素材の開発にしのぎを削っていた時代があって、その先に未来があるというような感覚が強かったと思うんですよね。ぼくが最近注目しているのは昔からある構法であるとか素材が、実は解釈し直せば未来の技術につながっていくんじゃないのかなと思うことがあるんですよね。この部分もエンバイロメントデザインの中で知って欲しいなと考えています。
QU. 設計やデザインとのかかわりについて教えてください。
ANS. エンバイロメントデザイン自体がひとつの設計手法になっていると思うんですね。基本的にエンバイロメントデザインにおいてはそれを駆使する側であるデザイナーの視点であるとかスタンスというものが非常に幅があるといえます。厳格な取り組み方と自然な取り組み方といいますか、例えばすごく機械とか設備を駆使するやり方のエンバイロメントデザインと、一方でパッシブデザインといわれるもっと自然な形で機械に頼らないで環境との関わり方を考えていくデザインというのもあると思うのですね。こちらはプランニングの手法と捉えても良いかもしれません。ぼくはバランスが大事だと思っていますので、この「バランス」がここでの質問である「エンバイロメントデザインと設計とのかかわり」だと解釈しています。先に述べたようにエンバイロメントデザインも設計と同義なわけですから、この質問は解釈しづらいのだけれども、少なくともこれから設計やデザインに関わっていく人たちにとって「エンバイロメントデザイン」はデザインを考える上での常識だと思ってやっていって欲しいと思っています。これが「かかわり方」の答えになると思うのだけれども、今までは色々なデザインの中でのひとつがエンバイロメントデザインであると思われていましたが、でもこれからはエンバイロメントデザインというものがデザインに於いてベーシックなものというか共通するものになってくると考えられます。「デザイナーの社会的役割のひとつである」という見識をもって勉強していって欲しいと思います。

QU.「持続可能な社会」に対する建築やインテリアの関わり方について教えてください。
ANS. 「維持可能な社会」という人もいますけれどもサスティナブルデザインというふうにデザインの分野では云われています。維持可能な社会を実現するためには究極なところは制度的な取り組みというのが必要になってくると思うのですね。モノのデザインではなくて制度の問題に至ってくる。その中でサスティナブルデザインというのはエンバイロメントデザインと同じように建築やインテリアの必須の部分になってくると思います。「維持可能な社会」の定義づけをわかりやすくお話ししておきます。今われわれの社会が地球の上で資源を使って豊かな生活を営んでいるわけでしょう?これが次の世代にはどうなるんですか?ということなんです。次の世代においてわれわれよりも豊かな生活ができるように資源をちゃんと残して環境を悪化させずに生活しているかどうかということが問われている訳です。今の豊かさを持続させる為にしなければいけないことがあるということですね。それをデザインのなかで実践していかなければいけない。例えば建築であれば多くの資源とエネルギーを使って建てる訳ですよね?建築やインテリアのようにエネルギーを沢山使う産業ですからそこの部分がいちばんサスティナブルデザインとして重要なところだと思います。
QU. エコとかこのここでお話をしているエンバイロメントデザインとかという動きに対して、反面、建築やインテリアというジャンルは実は一番の環境破壊者ともいえます。こうした状況をどう考えたらいいのでしょうか?
ANS. この質問に相当する一番代表的な例が一昔前まで使われていたコンクリートの型枠ベニヤだと思うのですね。あれは20年くらい前までは誰も指摘しなかったのですが、東南アジアのジャングルからラワン材とか熱帯性の木を切ってそれを加工してベニヤをつくっていました。材料として安いものですからコンクリートの型枠に長い間使われていたのですね。それがジャングルの破壊の大きな原因となっていました。東南アジアの山林というのは原住民がいますから人権的な問題まで発展していました。最近ようやく国が取り組み始めて針葉樹合板という形で代用するようになりました。こうした部分が制度的な取り組みということになるのだと思いますが、こうしたことが「環境破壊者」であるという代表的な事例でしょう。他方で先程のべたように素材について厳密に取り組むことにより破壊者にならないこともあるわけです。例えば針葉樹でも繰り返し同一エリアで切り出せるように手入れをするような方法を制度的にとればこれはここでの環境破壊にはあたらないわけです。誤解してはいけないのは単にデザインで資源を使うことが悪いということではない、その取り組み方だと思うのです。
QU. 田村先生のお仕事の中でこの授業に関わる部分で、よい実例があれば教えてください。
ANS. この授業の中では自然のサイクルということから学び始めて、最終的に建築の構造とか設備とかに踏み込んでいこうと考えています。その中で注目されている方法として機械設備にあまり頼らない、「パッシブソーラー」という概念があるのですね。通常のソーラーというのは電気を使ってモーターを回したりとか大掛かりな発電機に頼ったりとかしますけれども、「パッシブソーラー」というのは積極的に設備を使うのではなく、例えば日照のコントロール(*1)とか、或いは空気の循環とか蓄熱とか非常に原始的なやり方を組み合わせることで実は快適な室内環境ができるのではないかという取り組みなんですね。資源を使わずに快適な環境をつくるという意味で注目されています。

*1 自然光と鏡の関係をコントロール(店舗 " MOGA
Hair Salon " 1995年 ロンドン)
設計の中で実践しているなかからみなさんに紹介していけたらいいなと考えています。「パッシブソーラー」の例では、屋根面で暖かい空気を作り出して、その空気を床下に送り込み蓄熱をするというシステムなどがあります。(*2) 原理的にはそれだけなのですがその空気がやがて床下から室内に循環するようになってましてそれで室内暖房を行おうと。それに平行して庇で日照をコントロールして冬の日差しが床の蓄熱出来るような位置に到達出来るように設計し、夏は日差しを遮る。そういう工夫によって室内環境を向上させることなどを考えて行っています。

*2 パッシブソーラーによるアトリエ住宅 (鉄骨造3階建 延床面積117.87F 平成10年 和歌山市)
あと同じ木材でも遠くから資源を取り寄せて使うのではなく身近にあるその地方でとれる材料を最大限利用してその地方の風土にあったものをつくる(*3)という、そういうやり方をなども実践しています。
*3 紀州材による木造空間
(木造2階建 延床面積65.03m2 平成15年 和歌山市 国産材/紀州材 杉・ヒノキ)

屋上緑化した複合ビル(RC造4階建 延床面積728.83F 平成14年 東大阪市)
QU. 今後この分野において期待される事や展望についてひとこと
ANS. 今までのエンバイロメントデザインに対して、環境に配慮した建築という意味で設備重視のデザインだったと思うのですね。将来的には設備に頼らない手法を使って快適な空間をつくっていくということが重要です。その先に人間が自然界の中で生かされているんだという世界観をもてると思うのです。例えばこれから都市人口が増えていくと思うのですが、都市の中で自然に生かされているという感覚を持てるような、そういう空間をつくっていけたらいいのではないかなと思います。
QU. ありがとうございました。
インタビュアー :天田奈勇
写真 :田中絢子